デザート


「おや、目覚めたかね?」
 次に六人が目を覚ましたのは、赤の魔女の家のベッドの上だった。
「全く、あの娘も乱暴な送り方をする。大方、東の王子には魔術が効かないってんで空間のひずみに押し込んだのだろうよ。儂が捜して助け出しておらなんだら、お前ら皆身体がばらばらになって死んでいた所だ」
 しかし六人は、そんな魔女の話など聞く所ではなかった。
 身体中が引き裂かれるような痛みに悲鳴を上げている。
「お、おばあさま。このベッドは……?」
 かろうじて早苗が問うた。
 老婆の小さな家には、こんな大人六人が横になれるようなベッドはなかったはずである。
 老婆は茶目っ気たぷり笑ってみせた。
「儂を誰だとおもっとる? しかしやはり、お前には魔女としての才能があるようじゃのう。他の者達は痛みで口もきけまいて」
 見てみると、なるほどいつも飄々としている新那までもが、痛みに顔を歪めている。
「ほら、これをお飲み。次に目覚めた時には痛みもひいているだろうよ」
 六人は、老婆の言葉に誘われて深い眠りに落ちていった。
 そして皆、たまらない痛みと混濁していく意識の中で、最後の最後であの魔女にしてやられたと、ため息をついたのだった。




 テーブルの上に並ぶ晩餐は、舌平目フィレとジャガイモの重ね焼き、パセリ風味シトロンのさっぱりソースと生ハム添え、カリフラワーのピュレと牛ホホ肉を添えたクールブイヨンの冷製スープなどなど。
 五人の王子王女は目を輝かせた。
「うわーい。早苗の料理はいつ見てもおいしそうねぇ……」
「本当じゃな。昔妾の城にいた料理人よりも上じゃぞ」
「早く食べよう食べよう」
「白蓮、目がいってるぞ」
「あ、早苗それ俺が持つよ」
 そこは南の王国の食堂である。
 結婚する前から料理が趣味だった早苗は、月に何回かは自分で料理を作り、東と南から友人達を招待して晩餐会を開く。
「ああ、なんだかやっと落ち着いた感じだな」
 六人が全員席につくと、広路がそう言って息をついた。
 例の事件から一週間。
 六人はその後、初めて顔を揃えていた。
「そうねぇ。けれど王子夫妻が一日行方不明だったてのに、誰も慌ててなかったてのがうちの国平和な所だわ……」
「あ、僕の所もそうだったよ」
「そういえば、うちもそうでしたね広路さま」
「……」
「日頃の行いじゃな」
 新那はそう言うと、黙って両手を合わせた。
 他の五人も同じように手を合わせる。
 何はともあれ、皆無事で、こうして一緒にご飯を食べて、国は平和で、民は幸せそうで。
 ああ、どうか明日も幸せでありますように。
 そう六人は願った。




 南の第六王子が結婚したのはシンデレラ。
 東の第一王子が結婚したのは白雪姫。
 西の第二王子が結婚したのは眠り姫。
 伝説に残る夫婦達は、海よりも深い友情を持つ友人達でありました。
 そんな彼らの冒険は、まだまだ続く。

残念ながら続かないのである。