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「何で河野そんなに緊張してないの?」
 俺は試験会場に一緒に来た悪友、河野広中に聞いた。
 どうやら教室も同じらしく、俺達は一緒に指定された教室へ向かう。
「僕ここ滑り止めだから」
「うわ、可愛くないなお前」
「梶原も別に緊張してないじゃん」
「だって俺あんま進学する気ねーもん」
 俺はこの赤い髪にピアスっつーアウトロー的な外見には似合わず、料理が得意だったりする。いやマジで。いますぐ嫁にいけるくらい。そんで俺は馬鹿だから、高校卒業したらどっかのレストランで就職しようかと思ってた。調理師免許取る勉強しながら。
 が、母親と父親の猛反対を受け、二ヶ月に及ぶ冷戦の結果、結局今俺は大学の入試を受けに来ている。
 勝てねぇ。
 扶養家族である限りあのババァとジジィには勝てねぇよ。
 どうしてあいつらタッグ組んだらあんなに怖えんだよ。普段は普通の専業主婦と自営業のくせに。
「あーマジうぜぇ。受験とかいってすげうぜー!!」
「うるさい」
 あぃた。
 痛いっすよ、河野さん。
 俺の頭をはたいた河野は、他人のふりとばかりにそのままスタスタと目の前の大教室に入って行ってしまった。
 ちっ。
 俺は空を見上げた。
 そこは一棟から三棟への渡り廊下で、青い空がよく見える。
 いー天気だ。
 あー。
 受験なんかクソくらえだ。コラ。