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 俺はその足で彼女を連れて家に帰って、土下座した。
「千八百万貸してください、ついでに結婚許してください、心に余裕があるなら俺が大学いかない事も了承してください」
 生まれて始めて両手ついて、頭床にこすりつけて、懇願した。
 あぐらかいた親父は威厳溢れる様子で言った。
「結婚はついででいいのか」
 その視線は、俺のちょっと後ろで同じようにそっと両手をついて頭を下げている彼女に注がれている。 俺は顔を上げて親父を真っ直ぐに見返した。
「優先順位の問題だよ」
 さすが何千人という社員を束ねる社長である親父は、厳しい顔をしていると怖い。普段はテレビ見ながら屁こいたりするただのおっさんのくせに。おふくろには頭が上がらないおっさんのくせに。すっげぇギャップだけど、俺はこれも親父なんだと知っていた。
「結婚はできるだけ早い方が嬉しいけど少なくとも二十になれば親の承諾がなくてもできるし、大学いかない事なら事実上は親父達の承諾なんか別にいらないしな。親父、俺、やっぱ会社継がないよ。俺自分でバイトして調理師の資格とっていつか店開く。親父には悪いけど、会社やる才能ねぇよ俺。一介のレストラン店長の方がずっと合ってると思う
 ずっとそう言い切る勇気がなかった。
 けど何故か、今はもうなんでもできる気分だ。
 いや理由なんかわかってる。
 俺の女神が力をくれてるからだ。
 俺の後ろで、顔を上げて真っ直ぐに俺の背中見ている俺だけの女神が。
「会社は継がないくせに金だけ貸してとは都合のいい息子だな」
 親父がため息交じりに言った。
「出世払いって事にしといてくれ」
 俺はにやりと笑った。
「息子に投資しとくのも悪くないと思うぜ?」
 その俺の顔を見て、親父は少々情けない顔になって横のおふくろを見た。
「育て方を間違えたかな?母さん」
「失礼な。あなたにそっくりですよ。まったく」
 おふくろがそう言ってため息をつくと、親父も何とも言えない表情になる。
 そして俺と彼女を見ると、仕方ないといった様子で言ってくれた。
「好きにしろ」
「親父おふくろっ愛してるぜ!」
「ええい暑苦しい!どうせならそちらのお嬢さんに抱きつかれたいわ!」
「あなた!」

 女神と出会って、九時間三十分経過。
 あと残す問題は?