昔話

 昔々、ある王さまとお妃さまの間に、一人の女の子が生まれました。
 その子はお妃さまと同じ銀色の髪と王さまと同じ利発そうなお顔をしたかわいらしい赤ん坊でした。王さまとお妃さまは大層お喜びになり小さな王女さまにキスをしました。
 しかしその日の夜の事です。
 お妃さまの夢に、一人の青年が現れました。
 彼は人間ではないようでした。見た目には人間と全く同じように見えましたが、お妃さまには彼が人間でない事がすぐにわかりました。そして、その青年の腕の中にもまた、人間でない赤ん坊がいました。その赤ん坊は金色の髪をした、とても綺麗な赤ん坊でした。
 青年は言いました。
 お前の赤ん坊と、この赤ん坊を交換しよう。
 もちろんお妃さまは嫌だと言いました。
 当然です。お妃さまがお腹を痛めて産んだのは、あの銀色の髪を持った王女さまで、青年が抱く金色の髪を持った赤ん坊ではないのです。
 けれど青年はお妃さまの言葉など聞いてはいないようでした。
 気が付くと、青年の腕にいるのは、あの金色の髪の赤ん坊ではなく、お妃さまの可愛い王女さまでした。
 お妃さまははっと目を覚ましました。そして慌てて赤ん坊の眠るベッドを覗き込んだお妃さまは悲鳴を上げました。
 なんとそこに小さな王女さまはおらず、金色の髪をした男の子の赤ん坊がいたのです。
 お妃さまも王さまも慌てて城中を捜しましたが、どこにも小さな王女さまはいませんでした。
 お妃さまは大層悲しみました。
 王さまも大層悲しみました。
 お二人が悲しみましたので、金色の髪の綺麗な赤ん坊も悲しみました。赤ん坊の涙はとても綺麗で、お妃さまと王さまはまるで自分の子供のように、その赤ん坊を愛しく感じました。
 そうして、金色の赤ん坊は、王さまとお妃さまのたった一人の王子さまとして、すくすくと育ちました。