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 よくわからない構造の構内で、俺は本能にまかせて走り、ついに彼女に追いついた。
 そこは体育館の裏。
 てゆーかよくパンプスであんな走れんな。
 陸上部か?もしや。
 さすがの俺も、身体が大分暖まっていた。
 手を伸ばす。
 数十センチの差が数センチに縮まる。
 あと少し。
 捉えた。
 彼女を巻き込んで、俺はそのまま芝生に倒れた。
 引っ張られて彼女も倒れる。
 俺も彼女も肩で息をしていた。
 俺は掴んだ彼女の腕を離さなかった。
「......こんなに走ったの久しぶりよ」
 ようやく息を整えた彼女が言った。
「俺も」
 俺は答えた。
 とんでもなく気持ちが良かった。
 体育館の裏手のそこは、どういうわけか陽光がよく降りそそいできた。
 俺は上半身だけを起こして、もう一度彼女にキスをした。
 今度はひっぱたかれなかった。
「十年の距離は縮まった?」
 悪戯っぽく笑って言うと、女神は、俺が心奪われるほど綺麗だと思った笑顔で、お笑いになられた。
「まだ五年くらいかしらね」
 全力で走ったせいで彼女のスーツのスカートは捲くれて白く色っぽい御足をむき出しにしていたが、俺は手を出さなかった。
 今度はいたって紳士的に、俺は立ち上がって彼女に手を差し出した。
 彼女はいたって普通に俺の手を取り、ゆっくりと立ち上がった。その仕草の一つとっても俺の胸を高ぶらせるものとなった。
「梶原宵太郎」
 一応自己紹介をしておくと、知ってるわと女神は笑った。
 結局俺達はその場で別れ、俺は食堂に向かった。
 次は国語か。
 一目で藤壺に惚れた光源氏の気持ちを八〇〇字で書けって言われたら書ける。

 そんなこんなで五時間経過。



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