そういえばこうやって出会ったんだ1

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 青褐色の目がぎらぎらしていた。
 どこからか拾ってきた細い木の枝を両手で持ち構える姿はまるで獣のようで、その木の枝に宿っていた精霊が彼女に祝福の口付けをする。
 人間の美的感覚の中では決して美しいと評される容姿ではないが、精霊の中では彼女はいとし児だった。
 その魂が。不屈の精神が。
 きらきらと輝いていて、僕も含めた精霊達は皆それを喜んだものだった。
 彼女が精霊に追いつこうと努力する姿はまた格別に美しく、彼らはそれを見たくて余計に彼女と精霊の差を見せ付けた。
 木々を操り、風のように移動し、大気に解け、炎を出す。
 唇を噛み悔しがる彼女の内に燃え上がるものや、広がっていく孤独という名の闇でさえ美しく、精霊達はそれを愛したのだ。
 僕達は。
 あの子の、きれいな魂と、順応性と、素直さと、諦めの悪さと、残酷さと、孤独を愛した。
 飽きたら捨ててしまえるおもちゃをもてあそぶように、けれど忘却の存在しないその精霊としての性質ゆえの永遠の愛で。
 愛したのだ。
『今度こそ勝つわ、テティアト』
 その声。言葉。
 言葉の精霊の宿る重み。
 それが心地いい。
 相対する僕は笑う。
 僕が身に着けた剣技は、暇のあまりたわむれに、人間のやっていた事を真似した結果だった。
 すぐにこつを飲み込み、飽きた。
 けれど今この少女を高揚させて輝かせているものがこの剣術という人間の遊戯であるのなら、真似をしてみてよかったと思う。
 すべてを試してみたかった。
 この青褐色の双眸を輝かせる事すべて。
 この魂を輝かせる事すべて。
 それでこそ、僕がこの人間の少女を精霊の子供と取替えた意味があるというものだろうから。



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