区役所で手続きをして、受理を待っている間、彼女は話してくれた。
「教室に入ってきたあんたを見た瞬間、私、電撃にうたれたみたいになったわ。そうね、頭の中で鐘が鳴ったかも。リンゴーン。漫画みたいにね。世界中のたった一人を、私だけの男を、見つけたと思ったわ。けどまさか、いきなりあんな所でキスされるとは思わなかった。驚かされて、悔しかったから、少し意地悪を言ってみたの。けどね、始めから、十年の距離なんてなかったのよ」
女神はそう笑う。
俺は一目で彼女に惚れた。
彼女も一目で俺に惚れた。
これが運命でなくしてなんだろう?
俺達二人は出会うために生まれてきたんだ。
そう言うと、彼女は言った。
「運命?馬鹿ね。そんなものより、この何億人という人間の中で、偶然に出会ったのだという方が、何倍も運命的だと思わない?」
最高だと思った。
何がって?
そんな風にして笑う俺の女神が。
彼女との出会いは、俺を大きく変えた。
この一日は、俺を大きく変えた。
俺は普通の生ぬるい受験生だったのだけれど、彼女によって茨の道を歩き始めた。
きっと、辛い事があるだろう。
社会の荒波に。いわれのない中傷に。傷つく事もあるだろう。
それでも俺は、あんたがいるならどこまででも行ける。
誓うよ。
どっかにいるかもわかんない神様よりも、俺の目の前にいる女神様に。
一生、病める時も健やかなる時も、あんたを愛し続けると。
そしてその偶然から二十四時間。
俺達は晴れて夫婦となった。