女神の両親の墓は綺麗だった。
自分がまめに来て掃除しているのだと、彼女は言った。
そして手馴れた様子で花を供えて両手を合わせて、「ただいま」と彼女は言った。
「父さん母さん、私、結婚します」
彼女が言った。
俺の胸にくるものがあった。
「義父さん、義母さん。俺梶原宵太郎って言います。娘さんをいただきます」
俺はそう言うと、目の前の何の変哲もない墓石に向かって深く頭を下げた。
俺の女神は彼女の両親を愛していた。
自分を置いて死んでしまった母親も、借金と面倒を残して死んだ父親も、心から愛していた。
俺は彼女の両親に感謝した。
ありがとうございます。
あなた方のおかげで、俺は女神に会えました。
ありがとうございます。
そういう思いを込めて、頭を下げた。
彼女はそんな俺を、優しげに目を細めてみていてくれた。
さあて、二十二時間五十分ほどが過ぎて、俺達は手をつないで区役所へ向かった。